documentary photographer
ETSUSHI KAMINAGA
国に知られることのないストリートチルドレン
初めてラオスを訪れ、2つ目の街として辿り着いた北東部に位置する小さな街シェンクワン。
そこで数人のストリートチルドレンに出会った。
このとき僕は、この先も色々な都市を回り続ければ、ラオスには当たり前のようにある光景かと思っていた。
しかし、ラオスを旅しストリートチルドレンに出会ったのは、結局この街だけであった。
首都ビエンチャンに着いたとき、国営の観光案内所を尋ねると日本人スタッフの方が居た。
ラオスについて色々と尋ね、最後に一番気になっていたストリートチルドレンのお話を聞いた。
「最後にストリートチルドレンについてお伺いしたいのですが……」と尋ねはじめると…シェンクワンの名前を出す前にスタッフの方は、
「この国にはストリートチルドレンはいませんよ!何故だか分かりますか?」と逆に尋ねられてしまった。
正直、僕は戸惑った……
「この国は農業国だから食べ物に困らないのです。だからストリートチルドレンは生まれないのです。」と言っていた。
僕は、確かにシェンクワンでストリートチルドレンに出会った。何故、あの子たちは国に認識をされていないのだろうか?
とっさに僕は、シェンクワンでストリートチルドレンに出会った事を伝えた。
スタッフの方はとても驚いていた。ストリートチルドレンが居るはずがないと……
あの子たちには何か深い事情があるのか?それとも、国は見て見ぬ振りをしているのか?僕はこの子たちの存在が気になって仕方なかった。
国に知られる事の無いストリートチルドレンがここには居る。
僕は驚きと寂しさがこみ上げて来た。
何故食べ物に困らないこの国で、毎日食べ物を求め夜彷徨う子供たちが生まれてしまったのか?
路上で寝ないといけないのか…
その現実が知りたくなった。
翌年、僕はこの街を再び訪れた。
そこには衝撃的な現実があった。
路上で暮らす子供たちの両親は薬物中毒だった…
そして、ストリートチルドレンの数は前の年より増えていた。
なぜ、この街だけストリートチルドレンが増え続けるのか?薬物中毒が生まれるのか…
そして、この子たちが毎日どう暮らし、どう成長していくのか…
僕は毎年この地を訪れ撮影をし続け、複雑な家庭環境を追い続けている。
子供たちは年々、それぞれの道へと進んでいる。
ある子は、家と食べ物を与えてもらい、養殖魚の世話。給料は出ない。
ある子は、薬物に手をだしてしまい刑務所にはいってしまう。
ある子は、逃げ出した家に引き戻されてしまう。
この先、子供たちにはどんな未来が待っているのか僕は見届けたいと思う。